目で見る耳鼻咽喉科疾患-鼓膜編

目次

耳の解剖


鼓膜は外耳道の突き当たりにあります。鼓膜には耳小骨(3つの内の槌骨)が付着しています。外耳道に入った音は鼓膜を振動させ、3つの耳小骨(槌骨ツチコツ、砧骨キヌタコツ、鐙骨アブミコツ)へ伝わり、蝸牛で電気信号にかえられ内耳神経から脳へ伝わります。
左は右側の鼓膜の写真です。鼓膜に付着しているツチ骨の短突起とツチ骨柄と呼ばれる部分が透けて見えます。耳の中は光を入れて見ますので、その光が鼓膜に当たり反射している部分があり光錐といいます。正常の鼓膜は真珠のような色をしています。

急性中耳炎


右鼓膜の軽度発赤(赤み)、腫脹(腫れ)を認めます。
右鼓膜の発赤、腫脹を認めます。
右鼓膜の発赤、高度の腫脹を認めます。
鼓膜の発赤・腫脹が高度で、疼痛も強いため切開を行いました。右側が排膿を認めたところです(矢印)。

(単純性)慢性中耳炎


慢性中耳炎は大きく慢性単純性中耳炎と真珠腫性中耳炎に分かれます。  慢性単純性中耳炎は、急性中耳炎を繰り返すことや治らずに耳漏の出る状態が長引いたことが原因で起こります。次のような特徴があります。 @鼓膜穿孔(穴)があり、塞がらない状態です。A耳垂れ(耳漏)が続いたり、繰り返したりします。B難聴、めまいなども起こります。 耳漏が出るたびに、抗生剤内服・点耳などで治療します。手術の対象にもなります。
左の鼓膜です。鼓膜の面積の1/2程度の穿孔を認めます。現在、炎症を起こしており、鼓膜の発赤、耳漏を認めます。
左の鼓膜です。鼓膜の面積の7〜8割の大きな穿孔があります。現在は、炎症が治まっている状態で、鼓膜は乾いています。

真珠腫性中耳炎


 
真珠腫性中耳炎は慢性中耳炎のひとつです。原因に関してはよくわかっていないようですが、耳管機能が悪く、鼓膜の外と中の圧の調整がうまくできない状態がもとにあると言われています。
鼓膜の奥の圧が低いために、鼓膜の一部が、奥に凹んでいきます。凹んだ部分が袋状となり、中に耳垢が溜まっていきます。袋の中身(耳垢)は徐々に増えていきますので、袋がだんだんと大きくなり、周囲の構造物を溶かしながら回りへ広がっていきます。
耳漏を繰り返したり、徐々に難聴が進行し、めまい、顔面神経麻痺などの症状を起こすこともあります。
どちらも左側の鼓膜です。上方(鼓膜弛緩部)に小さな穿孔があります。

外耳道真菌症


    
急性中耳炎、急性外耳道炎、慢性中耳炎などは、細菌の感染によって発症することが多い疾患ですが、外耳炎の中には真菌(カビ)が原因となる場合があります。
慢性中耳炎の方に合併することも多いですが、健常な耳の方にも起こります。耳掃除をよくする習慣のある方にもよく見られます。
カンジダ、アスペルギルスといった真菌がよく見られます。
両方ともに右鼓膜です。鼓膜や外耳道に白いものが点々と付着しています。カビが生えた状態です。

滲出性中耳炎


滲出性中耳炎は小児と老人に多い疾患です。 耳管は通常閉じていますが、つばを飲み込む時に開いて、鼓膜の外と中の圧を調整する働きがあります。この耳管の開閉機能が何らかの原因で悪くなると、鼓膜の奥の部屋(鼓室)の空気が周囲の粘膜から吸収され、鼓室内が陰圧となります。すると、鼓膜は徐々に奥に引き延ばされ、凹んでいきます。また、鼓室の粘膜から滲出液が出てきて鼓室内に貯まります。この状態が滲出性中耳炎です。鼓膜が凹み、引き延ばされることと、水が溜まっていることから、鼓膜の振動が悪くなり、難聴となります。
水のたまった右側の鼓膜です。鼓膜全体が赤みを帯びています。半分から下にたまり、気泡も認めます。鼓膜は軽度陥凹しています。
水のたまった右の鼓膜です。上の写真と同様の変化を認めます。上の写真よりも、鼓膜の陥凹が強く、ツチ骨柄が水平に近くなっています(青矢印)。光錐も垂直になっています(黄矢印)。
上の鼓膜よりも更に陥凹の強い鼓膜です。短突起が強く突出しています。ツチ骨柄が見えにくくなっています(青矢印)。
耳管通気療法
治療は耳管通気療法を行うことがあります。鼻から管を耳管咽頭口まで入れて空気を送ったり、子どもの場合は、ポリッツェル球と呼ばれるゴム球を鼻に当てて通気します。
左は通気前の凹んだ鼓膜です。
耳管通気をすると右のように鼓膜の凹みが解消され、少し盛り上がります。聴力も少し改善されます。
鼓膜は凹んで引き延ばされているので、通気をすると、左の写真のようにかなり手前に盛り上がることもあります。
鼓膜切開・鼓膜チューブ留置術
右鼓膜ですが、陥凹の程度がひどく、鼓膜が奥の骨にくっついています(黄矢印)
通気療法を1〜2ヶ月行っても改善が見られない場合は、鼓膜切開を行います。左は矢印の内側が、中から出てきた滲出液です。非常に粘稠(粘っこい)な液がたまっていました。切開、貯留液吸引のみで改善する方もありますが、難治性の場合(すぐにたまってくる場合)は、チューブ留置を行います。
貯留液を吸飲した後、穴にチューブを留置しましす。 鼓膜はまだ凹んでいますが、しばらくするとピンと張るようになり、ほぼ正常の聴力となります。チューブは、なるべく長く(半年から1年)入れたままにしておきます。

外傷性鼓膜穿孔


耳掃除中に奥へ突いてしまったり、耳を叩かれたり、壁にぶつけたことなどが原因となり鼓膜に穴が開いてしまうことがあります。軽度の難聴、耳閉感(耳がつまった感じ、山に登ったときのような感じ)、耳鳴などが起こります。殆どの場合は自然に閉鎖して後遺症(難聴、耳鳴など)は残しません。閉鎖するまでの間、バイ菌がつかないように耳に水を入れないようにすることが大切です。

水疱性鼓膜炎


  
左の鼓膜です。軽度発赤、水疱形成を認めます。

鼓膜真珠腫


右の鼓膜です。白い腫脹を認めます。

休診のお知らせ

12月13日(水)、12月29日(金)〜1月3日(水)、1月27日(土) は休診日です。

当番医のお知らせ

12月10日(日) は当番医です。