アルゴンプラズマ凝固法

アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)は鼻の中の粘膜に花粉やハウスダストなどの抗原(アレルギーの原因となる物質)が付着することによりアレルギー反応を起こし、「くしゃみ」、「鼻水」、「鼻づまり」などの症状を起こします。

鼻の中で主にアレルギー反応を起こしたり、鼻閉を起こすのは「下鼻甲介」といわれる突起です。アルゴンプラズマ凝固法は、下鼻甲介の粘膜を変性縮小させることにより鼻づまり、くしゃみ、鼻水を軽減させます。

凝固装置
上の写真は凝固装置です

1.アルゴンプラズマ凝固法とは

アルゴンプラズマ凝固法とは、高周波電流をアルゴンガスとともに流して、下鼻甲介へ吹きつけ、同部の粘膜の表面を蒸散(水分を気体にすること)させる手術です。

この手術により、下鼻甲介の粘膜が変性し、縮むので、アレルギーの反応が起こりにくくし、鼻の通りを良くする効果があります。

レーザー照射と同様の手術ですが、より新しい治療法で、以下のような点が、レーザーと比較して優れています。

レーザー照射に比べて、アルゴンプラズマ凝固法は、粘膜の蒸散を均一な深度で確実に広範囲に行うことが出来ます。手術時間もレーザーに比べて短時間で済みます。

2.アルゴンプラズマ凝固法の適応

アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)の患者さんはの中で、特に鼻づまりの症状が強い方、飲み薬や点鼻薬が効きづらい方、薬を飲みたくない方がなどが手術の対象となります。

子供さんでも、動かないでじっと座っていられる年齢(中学生以上)は可能かと思われます。

心臓ペースメーカーを装着している方はペースメーカーが乱れる可能性があるためこの治療は受けられません。

鼻中隔彎曲症(鼻の左右を分ける壁の曲がりが強い方)の方は、壁が曲がって飛び出している側の手術は出来ない場合があります。

3.アルゴンプラズマ凝固法の効果

鼻づまりの改善は約90%、鼻水は約80%、くしゃみは約70%の人に改善がみられるとされています。
アレルギーの体質が治るわけではないので、変性した粘膜が元通りに戻ると、症状が再発します。(アレルギー性鼻炎が治るわけではありません)

1回の治療で効果は1~2年持続するといわれていますが、個人差があります。
効果が無くなった場合は、再度、焼灼を行うことが出来ます。

手術後、鼻内の状態が落ち着くまで2~4週間かかりますので、スギ花粉症の患者様は、前年の12月か1月上旬頃までに手術を受けることが望ましいと思われます。

手術は、保険適応です。費用は7,000円~1万円位です。

4.アルゴンプラズマ凝固法についての注意事項

warning アレルギー性鼻炎を「治す(将来にわたり罹らなくする、症状を全く消失させる)」治療法ではありません。
あくまで、鼻づまりを中心に、一定期間症状を和らげる・抑える治療です。内服や点鼻で効果がある方は、今まで通りの治療を続ける事が勧められます。
warning 術後すぐに症状が改善するわけではありません。
効果が出てくるまでの1~2週間の間は、鼻づまりが悪化しますので普段の状態より苦しくなる可能性があります。
warning 治療効果に関しては個人差があります。
全く効果が無いことは稀と思われますが、効果の持続は短い人で半年、平均1年前後、長くて2年位と言われています。従って、花粉症の患者様は毎年手術を受けることが必要な場合もあります。治療効果が弱い場合は、再手術を受けることも可能です。

以上の点についてご理解いただいた上で、治療をお申し込みいただきたいと思います。

5.手術の詳細

鼻の中に麻酔薬をつけたガーゼを入れ約30分間待っていていただきます。麻酔はこれだけで、注射は行いません。ガーゼを抜きアルゴンプラズマで下鼻甲介を焼灼します。実際の焼灼にかかる時間は5~10分です。痛みや出血はほとんどありません。

治療後、1週間から2週間程度は、焼灼した下鼻甲介の粘膜が炎症を起こすので、下鼻甲介は腫れて、「かさぶた」がたくさん付きます。そのため、その間は、今までより鼻づまりは悪化します。粘膜の炎症は、徐々に治まり、かさぶたが付かなくなり、鼻の通りも徐々に良くなります。この間週一回程度通院していただきます。

両側同時に行うと、両側の鼻が同時に詰まった状態になってしまうので、しばらくの間は、口呼吸となってしまいます。これを避けるために、片側ずつ手術を施行することも可能です。

凝固箇所
凝固するのは紫色の部分です

6.術後の注意事項

  • 痛み止め、炎症止めなどのお薬が出ますので、指示通り内服してください。
  • 当日の入浴は避けてください。術後、1~2週間程度は、鼻を強くかみすぎたり、激しい運動やアルコールなどは控えてください。
  • 術後は、鼻汁が多量に出たり、少量の出血がある場合があります。鼻づまりは、1週間程度悪化します。症状が強い場合、出血が多い場合は、指示の日以外でも受診してください。